ゲノム編集食品とは何か?現状と技術概要
ゲノム編集技術は、近年急速な進化を遂げているバイオテクノロジー分野のひとつです。
CRISPR-Cas9(クリスパーキャスナイン)を代表とする技術は、2012年にEmmanuelle Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)博士とJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)博士によって開発されました。
この画期的な技術により、DNAの一部を狙い通りに改変できるようになりました。
ゲノム編集食品は、この技術を使って開発された「特定の性質」を付与された農産物や水産物を指します。
例えば、サカタのタネ社が開発した「ゲノム編集トマト」はGABA成分の含有量を増加させるようゲノム編集されました。
また、京都大学発のスタートアップ「リージョナルフィッシュ」が開発した「早成長マダイ」も話題となっています。
ゲノム編集による食品は、狙った性質のみを改変することができ、従来の品種改良よりも精度が高いと称されています。
ゲノム編集技術が食品分野にもたらすメリットの裏にあるデメリット
ゲノム編集食品は高い生産性や品質向上を目指す技術革新として注目を集めています。
しかし一方で、消費者・生産者・研究者の間でデメリットやリスクへの懸念も根強く残っています。
ここでは、ゲノム編集食品のデメリットを深堀し、安全性や社会的影響についても検証します。
不確実な安全性評価—リスクの見落とし
ゲノム編集技術による改変は、従来の遺伝子組み換えよりも「自然」に近い変化だと説明されることがあります。
しかし、DNAの標的部位以外に「オフターゲット変異」が発現する可能性も否定できません。
たとえば、食品中の予期しないタンパク質発現が、アレルギー性や毒性のリスクを高めてしまう可能性も考えられます。
また、現行の日本の食品安全委員会では、ゲノム編集食品の安全性について企業の自己評価に基づき届け出を求める体制となっています。
これに対し、消費者団体や専門家からは厳密な第三者機関による評価体制の確立を求める声が挙がっています。
遺伝子の予測できない変化—長期リスクの不透明さ
ゲノム編集技術によるDNA改変が生物全体の生理機能にどのような影響を与えるかは、現段階では完全に解明されていません。
たとえば、GABA高含有トマトが長期的な摂取で人体に及ぼす影響についての実証データは限られています。
また、生態系への拡散リスクも無視できません。
編集された遺伝子が自然界で交雑し、野生種や他の作物に意図せぬ影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
欧州食品安全機関(EFSA)は、ゲノム編集による「予期しない副次的変化」の危険性について警鐘を鳴らしています。
消費者の知る権利と選択肢の損失
ゲノム編集食品に関する表示ルールは世界各国で大きく異なります。
日本では、ゲノム編集食品は「遺伝子組換えに該当しない」として表示義務がありません。
消費者は、自身が購入した食品がゲノム編集済みかどうか知る手段が原則存在しません。
これにより、倫理
